工藤公康さん(現:ソフトバンクホークスの監督)が現役時代に、城島健司さんを育てた逸話はとても興味深く、ためになるものと思いました。野球はもちろんですが、仕事や子育てなどにも参考になるものですので、今回ご紹介させていただきます。
工藤公康さんは1982年に西武ライオンズに入団して、1年目から活躍し、数年を経てエースにまで成長。渡辺久信、秋山幸二、清原和博らとともに黄金時代を築き上げ、95年にフリーエージェント制度でダイエーホークスへ移籍。ピッチャーとしての活躍はもちろん、低迷するチームの牽引役を任された。当時、若手のキャッチャーとして頭角を現していた城島健司さんとバッテリーを組み、特に、配球(どのコースに何の球種のサインをだすのか)について、熱い指導をされた。
結果だけでなく考え方を重視する
「プロは結果がすべて」という言葉がありますが、失敗やミスは必ずあります。工藤さんは城島さんに、どのような意図でそのサインを出したのかを考えさせました。球種、コース、前に投げさせた球種、打ち取りたい球種、試合展開、ピッチャーの調子、バッターの長所と短所、バッターが狙っている球、相性、風向き。。検討べき要素はいくつもあって、一球一球、キャッチャーは考える必要があるのです。
野球以外に置き換えると、例えば、仕事の場面で、営業の数字が目標に到達していないときに、上司は部下に対して「結果が出ていない」とだけ叱るのではなく、どうして伸び悩んでいるかについて一緒に検討しようと考え方を確認するということです。
痛い思いを体感させて分からせる
何度同じことを言われても、城島さんはなかなか改善しない考え方があったようです。工藤さんはある試合で城島さんのサインに「ダメなサインだ」と思ったのですが、首を振らずに危険な球と分かっていてあえてサイン通りに投げました。結果、ホームランを打たれたのですが、その場で城島さんに向かって「なっ打たれただろ?」という表情をして、サインの考え方が間違っているということを教えました。私は当時、工藤さんがテレビでこの話をしているのを聞いて、そのやりかたに驚いたことを覚えています。
このことの置き換えとして、例えば親の立場で、子供が公園の遊具で遊んでいるのを見ているときに、本人が後ろを注意してないから隣の遊具にぶつかるなと分かっていても、ぶつかって痛い思いをさせて子供に後ろを確認しないとダメであると分からせることは、時に必要なのかもしれません。
時間を空けずに指導する
工藤さんはサインの意図について、イニングが終わってインターバルのたびに城島さんに確認、話し合いをしていました。時には、プレー中にマウンド上で問い詰めることもあったとのことです。
試合が終わってからでは、感覚がずれるためにそのようにしたとのこと。試合中は何十球も投球があり、状況は刻々と変化するため、時間が空かないうちに確認する必要があると考えたのだと思います。
その後、ダイエーホークスは優勝を手にして、常勝チームへ成長を遂げます。城島さんは、球界を代表するキャッチャーに成長しホークスを牽引。さらにはメジャーリーガーになりました。工藤さんから受けた指導について「あれがあるから今の自分があるという気がする」と語っています。一方の工藤さんは「僕が育てたんじゃなくて彼が自分で育った」、「どれだけ厳しく叱っても食らいついてくる強靭な精神力が彼にはありました」と返しています。
工藤さんの指導の方法は、厳しいものではありますが、とても参考になるものと思います。
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