先日、ふと見た番組で涙を流してしまいました。NHKの「青年の主張2020」の再放送です。若者が思いのたけ伝える番組なのですが、みなさんとても素晴らしかったです。なかでも、私が涙してしまったお二人について、大人も考えさせられる内容でしたので、お伝えしたいと思います。
人生ではじめて弱音を吐きます(23歳の吉﨑やまとさん)
奄美大島の吉﨑やまとさんは、小さいころからとても身体が大きく、相撲をはじめて、地元で敵なし、将来は相撲取りになることを嘱望されていた。高校を卒業して東京の相撲部屋へ入門するが、5年経過して関取までにはまだ遠い位置であった。コロナで巡業が中止になることも多く、時間にゆとりができたため、自分を見つめ直すようになった。自分はこの先、相撲でやっていけるのか。同期が昇進していくなかで、結果が出ていない自分。コロナで景気が悪くなり、失業者が増えているという報道。自分が歳をとって相撲をやめたときに、相撲をとったら仕事があるのかと思うと不安になった。
自分を見つめる中でふと気づいたのは、今まで悩みを人に相談したことがないということ。悩みを見せることは、かっこ悪くて弱い姿を晒すこと。弱音を吐くことは許されないと思っていた。親方には「やりたいことがある」とだけ伝え、引退した。何かやりたいことがあったわけではない。かっこつけていたのだと思う。
地元の奄美大島に戻ったが、誰とも会いたくないとふさぎ込んでいたところ、中学時代の相撲のコーチが声をかけてくれた。コーチは「帰ってきてくれてうれしいよ」と言ってくれた。この時、心の中につっかえていたものがとれたような気がした。強がらないで、自分の弱いところを見せてもいいんだと。
そして、この場をかりて弱音を吐きます。
相撲がきらいになった訳ではありません。
でも、きつかった。
稽古もきつかった。
まわりが強いこともきつかった。
逃げ場のない集団生活もきつかった。
僕は強くなんてなかった。
もう限界だったんです。
でも、今まで支えてくださったみなさんには本当に感謝しています。
これまでの経験を無駄にしないようにこれからの人生を考えたいと思います。
ありがとうございました。
これまで限界まで耐えて頑張ってきたことが分かります。弱音を吐くのはためらいの気持ちはあるだろうに、素直に、正直に、不器用に、涙を流しながら話す姿は、見ている私までとめどなく涙が出てきました。「多くの人前で涙を流して訴えることができるほど、何かに打ち込んだことがあるのか」と突き付けられたように思いました。
大人のみなさんにお願いがあります(15歳の中井健翔さん)
通信制高校の1年生の中井さん。脳性麻痺の影響で足に障害がある。しかし、中井さんは「ぼくの中でこの足は人から覚えてもらいやすい個性」「この足をみて中井だと分かってもらえたらめっちゃいいことじゃないですか」「ぼくにとってはプラスなほうが大きいです」と前向きに自分を語る。
そして、いじめの過去を告白。小学校5年のときに自分の障害を理由にいじめにあった。言葉だけの暴力にとどまらず、階段から突き落とされるなど、身体的な暴力に変わっていった。耐えかねて不登校になった。次第に、いじめから逃げた劣等感と将来の不安に襲われ、不登校の自分が嫌いになった。そんな自分を救ってくれたのは絵本だった。もともと絵本作家になりたかった自分は、もやもやした気持ちを絵本にして表現した。イベントで販売したところ、褒めてくれたり、共感してくれる人がいた。自己肯定感があがり、不登校であることは恥ずかしくないと思った。
ふと、自分をいじめていた同級生のことを思い出した。なぜ自分をイジメたのだろう。彼らの言っていたことを思い出すと、「親に無理やり塾や習い事にいかされて自分の時間が無い」「やりたいことをやろうとしても大人からとめられてしまう」彼らは、やりたいことを大人から抑圧されていて、そのストレスや不満を私にぶつけていたのだと分かった。もし彼らに自分のやりたいことを表現できる場所があったならいじめなんておきなかったのではないか。そう思ったので、自身で、子供が主催、子供が出展、子供が運営するこどもばんぱくを開催した。プログラミングしたものや絵など、子供が自分で作ったものを表現して、販売して、会場はポジティブなパワーで満ち溢れていた。
大人のみなさんにお願いがあります。
子供たちに自由な表現をさせたり、新たなツールを使わせることは、危険だと思うかもしれません。でも、これからの世界をつくっていくのは、僕たちの世代です。否定したり、拒絶するのではなく、考えて、応援してもらえませんか。大人と子供で意見の食い違いがあったとしても、お互いの意見に耳を傾ければ、きっとよりよい未来が作れると思います。
多くの人は、いじめられたら、相手が憎いと思ってしまいます。中井さんは、いじめた相手のことを想うことができる。。凄いです。これは、大人になっても、何十年経っても、この境地に至らない人のほうが多いと思います。それをわずか10代半ばの子がこのように考えられていることにとても関心させられました。
自分よりも何十も下の若者の言葉から、こんなに心打たれて、自分自身を考えさせられることに、感心させられました。若い人の意見をもっと聞く姿勢が大事だと思います。
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